保全
第4章 設備の管理
設備保全は、生産設備を常に良好な状態に保ち、故障や不良を未然に防ぐための活動全般を指します。保全の方式には予防保全・事後保全・改良保全・保全予防があり、設備のライフサイクルに応じて使い分けることが重要です。また、設備の故障パターンを表すバスタブ曲線は試験でも頻出のテーマです。
故障の定義と保全の組織形態
簡単にいうと
簡単にいうと、「故障」とは設備が本来の機能を果たせなくなることです。故障の大小(ドカ停/チョコ停)や、保全を誰が担当するか(集中保全/部門保全)について整理します。
故障とは、設備やシステムが以下のいずれかの状態に陥ることを指します(JIS Z 8141-6108)。
1. 規定の機能を喪失した状態
2. 規定の性能を満たせない状態
3. 製品の品質レベルが規定水準に達しない状態
故障の種類として、ドカ停(大停止)は設備が長時間停止する重大故障、チョコ停(短時間停止)は短い時間だけ停止する軽微なトラブルを指します。チョコ停は1件1件は小さくても頻発すると大きなロスになります。
設備の劣化には2種類あります。自然劣化は時間経過に伴い自然に進行する摩耗・老朽化です。強制劣化は手入れ不足や誤操作など人為的原因で本来より早く進行する劣化です。
保全の組織形態
| 形態 | 定義 | 特徴 |
|---|---|---|
| 集中保全 | 専門の保全部門が工場全体の設備保全を一手に担う形態(JIS Z 8141-6211) | 専門性が高い。高度な修理や計画保全に適する |
| 部門保全 | 各製造部門が自部門の設備を保全する形態(JIS Z 8141-6212) | 現場密着型。日常保全や迅速な対応に適する |
具体例
食品工場で包装機が月に50回のチョコ停を起こしていました。1回あたり3分と短いものの、月間で150分(2.5時間)のロスが発生。チョコ停の原因を分析したところ、給油不足による強制劣化が原因でした。自主保全で清掃・給油の基準を設けたことでチョコ停が月5回に激減しました。
バスタブ曲線 ─ 故障率の推移
試験のポイント
- ・故障の3条件(機能喪失/性能不達/品質不達)を覚えましょう
- ・ドカ停(大停止)とチョコ停(短時間停止)の違いを理解しましょう
- ・自然劣化と強制劣化の違い、集中保全と部門保全の違いは出題頻度が高いです
保全活動の分類
簡単にいうと
簡単にいうと、保全活動は「壊れる前に直すか、壊れてから直すか、そもそも壊れにくくするか」の4つのアプローチに分かれます。
設備の保全活動は大きく以下の4つに分類されます。
予防保全(PM:Preventive Maintenance)は、設備が故障する前に計画的に点検・修理を行う方式です。さらに2つに細分されます。
- 時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance):一定の時間間隔で定期的に部品交換や整備を行う方式
- 状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance):設備の状態を監視し、劣化傾向を捉えて適切なタイミングで保全を行う方式
事後保全(BM:Breakdown Maintenance)は、設備が故障してから修復する方式です。故障しても生産への影響が小さい設備に適用します。
改良保全(CM:Corrective Maintenance)は、故障の原因を根本的に取り除くために設備の設計や構造を改善する活動です。同じ故障の再発を防止します。
保全予防(MP:Maintenance Prevention)は、新しい設備を導入する段階で、保全しやすい設計や信頼性の高い構造を織り込む考え方です。設備のライフサイクルコスト(LCC)を最小化することが目的です。
具体例
食品工場のベルトコンベヤでは、3か月ごとにベルトを交換する「時間基準保全」を採用しています。一方、振動センサーでモーターの状態を常時監視し、異常振動を検知したら交換する方式は「状態基準保全」です。
試験のポイント
- ・予防保全のTBM(時間基準)とCBM(状態基準)の違いを区別しましょう
- ・改良保全は「故障原因を設計レベルで改善」、保全予防は「導入時点で保全性を確保」という違いに注意
- ・事後保全が適用されるのは「故障しても影響が小さい設備」に限定される点を押さえましょう
バスタブ曲線(故障率曲線)
簡単にいうと
簡単にいうと、バスタブ曲線は「設備は使い始めと寿命末期に壊れやすく、中間期は安定している」というパターンをバスタブ(浴槽)の形で表したグラフです。
バスタブ曲線は、設備の故障率を時間の経過とともにプロットしたもので、浴槽の断面に似た形状になることからこの名前がついています。3つの期間に分かれます。
初期故障期:使用開始直後は故障率が高く、時間とともに低下していく期間です。設計不良・製造不良・取付ミスなどが原因です。デバッグやならし運転で故障率を早期に低下させます。
偶発故障期:故障率がほぼ一定で安定する期間です。故障はランダムに発生し、予測が困難です。この期間が設備の有効活用期間となります。予防保全で故障率を低く維持することが重要です。
摩耗故障期:使用期間が長くなり、部品の摩耗・劣化・疲労により故障率が急激に上昇する期間です。部品の計画的な交換や設備の更新が必要になります。
具体例
自動車のエンジンを例にすると、新車直後にマイナートラブルが発生しやすい(初期故障期)、その後は安定して走れる(偶発故障期)、走行距離10万kmを超えると部品の摩耗で故障が増える(摩耗故障期)、というパターンがバスタブ曲線に相当します。
試験のポイント
- ・バスタブ曲線の3期間(初期故障期・偶発故障期・摩耗故障期)の名称と特徴を覚えましょう
- ・偶発故障期は故障率が「一定」であり、この期間が設備を最も有効に活用できる期間です
- ・初期故障期は「DFR(Decreasing Failure Rate:減少型)」、摩耗故障期は「IFR(Increasing Failure Rate:増加型)」と呼ばれることも押さえましょう
TPM(全員参加の生産保全)
簡単にいうと
簡単にいうと、TPMは「保全担当者だけでなく、オペレーターを含む全員で設備を守りましょう」という活動です。自主保全がその柱になります。
TPM(Total Productive Maintenance)は、設備のライフサイクル全体を対象に、生産部門だけでなく全部門・全員が参加して行う生産保全活動です。日本プラントメンテナンス協会が提唱しました。
TPMの基本は自主保全活動で、設備を使うオペレーター自身が日常的な清掃・給油・増し締め・点検を行い、設備の異常を早期に発見する活動です。「自分の設備は自分で守る」という意識が根幹にあります。
TPMでは設備の6大ロス(のちに7大ロスに拡張)を徹底的に排除し、設備効率の最大化を目指します。
具体例
製造ラインの作業者が毎朝始業前に5分間、担当する機械の清掃・異音チェック・油量確認を行う活動がTPMの自主保全です。これにより、保全部門だけでは気づけない初期段階の異常を発見できるようになります。
自主保全7ステップ
試験のポイント
- ・TPMは「全員参加」が特徴で、保全部門だけの活動ではないという点を押さえましょう
- ・自主保全は「オペレーターが行う」保全活動であるという点が重要です
- ・TPMとPMの違い(PMは保全部門中心、TPMは全部門参加)を区別しましょう
自主保全7ステップ
簡単にいうと
簡単にいうと、自主保全は「自分の設備は自分で守る」という考え方で、製造オペレータが段階的に保全技能を身につけていく7つのステップです。
自主保全は、TPM活動の中核をなす活動で、製造部門のオペレータ自身が設備の日常的な維持管理を行うものです。以下の7ステップで段階的にレベルアップしていきます。
| ステップ | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 初期清掃 | 設備の徹底的な清掃を行い、不具合を発見する(清掃は点検なり) |
| 2 | 発生源・困難箇所対策 | 汚れの発生源や清掃しにくい箇所を改善する |
| 3 | 自主保全仮基準の作成 | 清掃・給油・増締めの暫定基準を自分たちで作成する |
| 4 | 総点検 | 設備の構造や機能を学び、総合的な点検技能を習得する |
| 5 | 自主点検 | 仮基準を見直し、本格的な点検基準を整備する |
| 6 | 標準化 | 点検・清掃の手順や基準を標準化し、維持管理を仕組み化する |
| 7 | 自主管理の徹底 | 改善活動を自律的・継続的に行える状態を確立する |
設備維持の基本3条件は「清掃・給油・増締め」です。これらを確実に実行するだけで故障の多くを防止できます。
計画保全は自主保全と対をなす活動で、専門の保全部門が設備診断技術や計画的な修繕を通じて設備信頼性を向上させます。
具体例
ステップ1の初期清掃で射出成形機を徹底清掃したところ、油漏れ3箇所、ボルトの緩み5箇所、配線の損傷1箇所が発見されました。「清掃は点検なり」の理念どおり、清掃によって日頃見逃していた不具合が明らかになりました。
試験のポイント
- ・7ステップの順序と各ステップの名称を覚えましょう(特にステップ1~3が頻出)
- ・設備維持の基本3条件「清掃・給油・増締め」は必ず覚えましょう
- ・自主保全(オペレータが担当)と計画保全(専門保全部門が担当)の役割分担を理解しましょう
まとめ
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