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信用創造と貨幣乗数

貨幣市場とIS-LM分析

この節では、銀行システムがどのようにしてお金を「増やす」のか、そのメカニズムである信用創造貨幣乗数を学びます。さらに、中央銀行がマネーストックを調整するために使う金融政策の3つの手段を理解しましょう。

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信用創造のメカニズム

簡単にいうと

銀行にお金を預けると、そのお金は別の人に貸し出されて、また預金されて、また貸し出されて…こうして元のお金の何倍もの預金が生まれるよ!これが信用創造のマジック!

① 信用創造とは何か

信用創造とは、銀行システム全体を通じて、最初に受け入れた預金の何倍もの預金が自動的に生み出されるメカニズムのことです。銀行は預金の全額を金庫に保管しているわけではなく、一部だけを準備として残し、残りを貸し出します。この「預金→貸出→再び預金」という連鎖が繰り返されることで、経済全体の預金総額が元の金額を大きく超えて膨らんでいくのです。

② 支払準備率の役割

銀行は受け入れた預金のうち、一定割合を支払準備(準備預金)として日本銀行に預けることが法律で義務づけられています。この割合を支払準備率(法定準備率)といいます。たとえば支払準備率が10%であれば、1,000万円の預金を受け入れた銀行は100万円を日銀に預け、残り900万円を貸し出すことができます。支払準備率が高いほど貸し出せる金額は小さくなり、信用創造の規模も縮小します。

③ 信用創造の連鎖プロセス

信用創造は次のような連鎖で進みます。まず、A銀行が1,000万円の預金を受け入れ、100万円を準備に回して900万円を企業に貸し出します。その企業が受け取った900万円はB銀行に預金され、B銀行は90万円を準備に回して810万円を別の企業に貸し出します。このプロセスが無限に繰り返されることで、最終的な預金総額は元の預金額の1/支払準備率1/\text{支払準備率}倍に達します。

具体例

信用創造の連鎖を、具体的な数字で追いかけてみましょう。

ある企業がA銀行に1,000万円を預金したとします。支払準備率は10%です。

ステップ1 A銀行は1,000万円のうち100万円(10%)を日銀に準備預金として預け、残り900万円をX社に貸し出します。

ステップ2 X社が受け取った900万円はB銀行に預金されます。B銀行は90万円を準備に回し、残りの810万円をY社に貸し出します。

ステップ3 Y社が受け取った810万円はC銀行に預金されます。C銀行は81万円を準備に回し、729万円を貸し出します。

この連鎖がどんどん続くと、預金総額は1000+900+810+729+1000 + 900 + 810 + 729 + \cdotsと積み上がっていきます。これは初項1,000、公比0.9の等比級数で、合計は100010.9=10000\frac{1000}{1-0.9} = 10000万円(1億円)となります。つまり、たった1,000万円の元手から、銀行システム全体で1億円もの預金が生まれたのです。

試験のポイント

  • 要は「預金→貸出→預金の連鎖で元の預金が何倍にも膨らむのが信用創造」
  • 派生的に創造された預金額=預金総額−元の預金額(上の例では9,000万円)という計算問題が頻出
  • 支払準備率が変わると信用創造の規模がどう変化するかも問われる
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貨幣乗数

簡単にいうと

貨幣乗数は「元のお金が何倍に膨らむか」を一発で計算できる便利な数字!ハイパワードマネー×貨幣乗数=マネーストック、この公式を覚えよう!

① 貨幣乗数(信用乗数)の公式

貨幣乗数とは、信用創造によって元の預金が最終的に何倍の預金総額になるかを表す数値です。最もシンプルなモデルでは「貨幣乗数=1/支払準備率1/\text{支払準備率}」で求められます。たとえば支払準備率が10%なら貨幣乗数は10倍、5%なら20倍です。支払準備率が小さいほど銀行が貸し出せる金額が大きくなるため、乗数も大きくなります。

② ハイパワードマネー(マネタリーベース)

ハイパワードマネーとは、日本銀行が直接コントロールできる通貨の量のことで、「現金通貨+日銀当座預金」で構成されます。これは信用創造の「種」にあたるお金であり、銀行システムが信用創造を行う出発点となります。日銀はこのハイパワードマネーの量を公開市場操作などで調節することで、経済全体のマネーストックに影響を与えています。

③ マネーストックとの関係式

マネーストック(マネーサプライ)は、ハイパワードマネーに貨幣乗数を掛けた値として表されます。すなわち「マネーストック =ハイパワードマネー×貨幣乗数= \text{ハイパワードマネー} \times \text{貨幣乗数}」です。この関係から、日銀がハイパワードマネーを1兆円増やせば、マネーストックは貨幣乗数倍(たとえば10兆円)増えることがわかります。中央銀行が少額の操作で大きな効果を生み出せるのは、この乗数効果のおかげです。

具体例

貨幣乗数を使った計算を実際にやってみましょう。

支払準備率が5%のとき、日銀が買いオペで市中銀行に100億円を供給したとします。

まず貨幣乗数を計算します。貨幣乗数=10.05=20\text{貨幣乗数} = \frac{1}{0.05} = 20倍です。

次に、マネーストックの増加額を求めます。100×20=2000100 \times 20 = 2000億円です。

つまり日銀がたった100億円を市中に供給しただけで、信用創造を通じて最大2,000億円ものマネーストックが生み出される計算になります。

もし支払準備率が10%に引き上げられたらどうなるか考えてみましょう。貨幣乗数は1/0.1=101/0.1 = 10倍に低下し、同じ100億円の供給でもマネーストックの増加は1,000億円にとどまります。このように、支払準備率のわずかな変更が経済に非常に大きなインパクトを与えるのです。

試験のポイント

  • 要は「貨幣乗数=1/支払準備率で、ハイパワードマネー×貨幣乗数=マネーストック」
  • ハイパワードマネーの構成(現金通貨+日銀当座預金)の定義問題、支払準備率の変更による貨幣乗数の変化の計算問題が頻出
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金融政策の手段

簡単にいうと

日銀の武器は3つ!「公開市場操作」「公定歩合操作」「準備率操作」!現在のメインウェポンは公開市場操作で、国債の売買で景気をコントロールするよ!

① 公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)

公開市場操作は、現在最も重要な金融政策手段であり、日銀が金融市場で国債などの有価証券を売買することでマネーストックを調節する方法です。買いオペでは日銀が市中銀行から国債を買い取り、その代金として銀行にお金を渡すことで、市中に資金を供給します。これによりマネーストックが増加し、利子率は低下して、景気を刺激する効果があります。逆に売りオペでは日銀が保有する国債を市中に売却し、代金として銀行からお金を吸収することで、マネーストックを減少させ、利子率を上昇させます。

② 公定歩合操作(基準割引率および基準貸付利率)

公定歩合操作とは、日銀が市中銀行にお金を貸し出す際の金利(公定歩合)を変更する政策です。かつて金利が規制されていた時代には、公定歩合を動かすと銀行の貸出金利も連動して変わるため、大きな効果がありました。しかし現在は金利が自由化されており、公定歩合の変更が経済に与える直接的な影響は限定的になっています。このため名称も「基準割引率および基準貸付利率」に変更され、実務上の重要性は低下しています。

③ 準備率操作(支払準備率操作)

準備率操作は、銀行が日銀に預けなければならない準備預金の割合(法定準備率)を変更する政策です。準備率を引き下げると、銀行はより多くの資金を貸し出せるようになり、貨幣乗数が上昇してマネーストックが増加します。反対に準備率を引き上げると、銀行が貸し出せる資金が減り、貨幣乗数が低下してマネーストックが減少します。ただし、準備率の変更は経済への影響があまりにも大きいため、現在の日本ではほとんど使われていません。

手段概要現在の重要度
公開市場操作国債の売買でマネーストックを調節最重要(主力手段)
公定歩合操作日銀の貸出金利を変更低い(金利自由化で効果限定)
準備率操作法定準備率を変更ほぼ未使用(影響が大きすぎる)

具体例

不景気のとき、日銀がどのように対応するか一緒に考えてみましょう。

いま日本経済が不景気で、企業の設備投資が冷え込んでいるとします。日銀は景気を刺激するために金融緩和政策を実施します。

メインの手段: 買いオペを実施

日銀が市中銀行から国債を1兆円分買い取ります。銀行の手元には1兆円のキャッシュが入り、これが信用創造の種になります。支払準備率が5%なら、貨幣乗数は20倍ですから、最大で1×20=201 \times 20 = 20兆円のマネーストック増加が見込めます。利子率が低下し、企業にとって借入コストが下がるため、設備投資が活発化するのです。

逆に景気が過熱したとき

日銀は売りオペを実施します。市中に国債を売却してお金を吸い上げることで、マネーストックを減少させます。利子率が上昇し、過剰な投資や消費にブレーキをかける効果があります。

試験のポイント

  • 要は「買いオペ→MS増加・利子率低下、売りオペ→MS減少・利子率上昇が最重要」
  • 3つの手段のうち公開市場操作が現在の主力であること、準備率操作は貨幣乗数を直接変えるため効果が大きすぎて使われないこと、公定歩合操作は金利自由化で効果が限定的になったことが問われる

まとめ

概念
定義・公式
ポイント
信用創造
預金→貸出→預金の連鎖
銀行システム全体で預金が膨らむ
支払準備率
日銀に預ける預金の割合
信用創造の規模を決める
貨幣乗数
1/支払準備率1/\text{支払準備率}
元の預金が何倍になるか
ハイパワードマネー
現金通貨 + 日銀当座預金
日銀が直接コントロールできる通貨
公開市場操作
国債の売買
現在最も重要な金融政策手段

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