中小企業の成長(成長投資・設備投資・M&A)
第3章 中小企業白書2024年版第2部 環境変化に対応する中小企業
成長投資に意欲的な中小企業について、設備投資・M&A・イノベーション・海外展開に焦点を当て、その取組状況と効果を確認します。経営方針別に業績の変化率を比較すると、積極的に行動する企業ほど売上高・経常利益・労働生産性が高い傾向が示されています。
成長投資への意欲と経営方針別の業績
簡単にいうと
「付加価値を高める行動をすべき」企業の売上高変化率(中央値)が1.6%で最高。経常利益変化率は「新たな需要を獲得する行動をすべき」が40.6%で最高!一方、静観企業は売上高変化率▲6.0%と最低。
中小企業の経営方針と業績の関係です。
① 「中小企業の経営方針」関連まとめ(図表1-3-18)
| 経営方針 | 理由(1位) |
|---|---|
| 「新たな需要獲得」「付加価値向上」の行動をすべき | 「利益を上げるため」71.3%が最多 |
| 損失を避けるために静観すべき | 「リスクに見合う結果が得られるとは思えない」49.3%が最多 |
② 業績の変化率(経営方針別、中央値・図表1-3-19)
| 経営方針 | 売上高変化率 | 経常利益変化率 | 労働生産性変化率 |
|---|---|---|---|
| 新たな需要を獲得するための行動をすべき | 0.9% | 40.6% | 1.3% |
| 付加価値を高めるための行動をすべき | 1.6% | 31.5% | 0.4% |
| 損失を避けるために静観すべき | ▲6.0% | 18.8% | ▲2.2% |
| 対象企業全体の中央値 | 0.4% | 33.4% | 0.4% |
「損失を避けるために静観すべき」の企業は消極的な経営姿勢のため売上高の変化率が▲6.0%と最も低い。「新たな需要を獲得する行動をすべき」の企業は経常利益と労働生産性で最も高い変化率を示している。
試験のポイント
- ・売上高変化率(中央値)が最も高い経営方針:「付加価値を高める行動をすべき」1.6%
- ・経常利益変化率(中央値)が最も高い経営方針:「新たな需要を獲得する行動をすべき」40.6%
- ・「損失を避けるために静観すべき」の企業の売上高変化率:▲6.0%(最低)
- ・「積極的な行動をすべき」理由1位:「利益を上げるため」71.3%
成長に向けた設備投資
簡単にいうと
小規模企業の設備投資額(4.8兆円)は大企業(22.0兆円)・中規模(12.5兆円)より低水準。設備投資を実施した企業は未実施企業より売上高が高い傾向!ソフトウェア投資比率も大企業・中小企業ともに増加傾向。
成長に向けた設備投資の実態です。
① 設備投資額の推移(企業規模別・図表1-3-20)
小規模企業は大企業・中規模企業に比べて設備投資額が低水準で推移。
直近の設備投資額:大企業22.0兆円、中規模企業12.5兆円、小規模企業4.8兆円。
② 成長に向けた設備投資の実施状況(業種別・図表1-3-21)
「実施した」の回答割合が最も高い業種は「宿泊業」(55.0%)で、次いで「製造業」「環境業」(ともに約55〜59%)となっている。「情報通信業」は「実施していない」が75.1%と高く、設備投資を実施していない企業が多い。
③ 売上高の推移(設備投資の実施有無別・図表1-3-22)
「2017年度に実施した企業」は「2017〜2021年度の間一切実施していない企業」と比べて、2021年度時点の売上高が増加している傾向(実施:106.3 vs 非実施:99.7)。
④ 売上高の推移(無形固定資産投資の実施有無別・図表1-3-23)
無形固定資産(ソフトウェア等)投資を「2017年度に実施した企業」は「未実施企業」に比べて、2020年度の落ち込みが軽度かつ2021年度の伸びが大きく、売上高の成長度合いが高い(実施:133.6 vs 非実施:100.3)。
⑤ ソフトウェア投資比率の推移(企業規模別・図表1-3-24)
大企業・中小企業ともに増加傾向。直近:大企業14.6%、中小企業8.0%。
試験のポイント
- ・直近の設備投資額:大企業22.0兆円・中規模12.5兆円・小規模企業4.8兆円(低水準)
- ・設備投資実施率が最も高い業種:「宿泊業」(55.0%)
- ・設備投資を実施した企業の売上高(2021年度):106.3(非実施99.7より高い)
- ・無形固定資産投資を実施した企業の売上高(2021年度):133.6(非実施100.3より大幅に高い)
- ・ソフトウェア投資比率:大企業14.6%・中小企業8.0%(ともに増加傾向)
成長に向けたM&A
簡単にいうと
M&A件数は増加傾向、2022年には過去最多4,304件。中小企業でもM&Aにより子会社・関連会社が増加した企業割合が上昇!M&A実施企業は非実施企業より売上高・経常利益・労働生産性が高い傾向。PMI(統合後プロセス)が成功の鍵。
成長に向けたM&Aの動向と効果です。
① M&A件数の推移(図表1-3-25)
近年増加傾向で推移しており、2022年には過去最多の4,304件となった。足下の2023年は前年に比べ減少したが、4,015件と高水準。
② M&A実施件数(2021年度・図表1-3-27)
譲渡側:3,403件、譲受側:3,275件(譲渡側のほうが多い)。
③ 事業承継・引継ぎ支援センターの相談社数・成約件数の推移(図表1-3-26)
相談社数・成約件数ともに近年増加傾向。2022年:相談14,414件、成約1,681件。
④ M&Aにより子会社・関連会社が増加した企業割合の推移(企業規模別・図表1-3-28)
2012〜2021年の推移を見ると、大企業は横ばい(1.0%程度)、一方中小企業では上昇(0.5%→0.9%)している。
⑤ M&Aを実施した企業の業績(設備投資・M&A有無別)
「2017年度にM&Aを実施した企業」は「未実施企業」と比べて、2020年度以降において売上高・経常利益・労働生産性を向上させている(図表1-3-29〜31)。
売上高(2021年度):実施103.1 vs 非実施99.9 / 経常利益(2021年度):実施146.9 vs 非実施118.2 / 労働生産性(2021年度):実施105.0 vs 非実施100.7。
⑥ 買い手としてのM&Aの目的(図表1-3-29)
「市場シェアの拡大」が38.3%で最多、次いで「経営資源(人材)の共有」30.4%。
⑦ PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)
PMIとは中小企業庁「中小PMIガイドライン(2022年)」によると、「主にM&A成立後に行われる統合に向けた作業であり、M&Aの目的を実現させ、統合の効果を最大化するために必要なもの」。
PMIの重点取組(成立前):「相手先経営者とのコミュニケーションを通じた相互理解」56.1%が最多。
PMIの重点取組(成立後):「相手先従業員とのコミュニケーションを通じた相互理解」45.4%が最多。
試験のポイント
- ・M&A件数:増加傾向、2022年は過去最多4,304件、2023年は4,015件
- ・M&A実施件数(2021年度):譲渡側3,403件・譲受側3,275件(譲渡側が多い)
- ・中小企業のM&A比率:大企業は横ばい、中小企業は上昇(0.5%→0.9%)
- ・買い手のM&A目的1位:「市場シェアの拡大」38.3%
- ・PMI:M&A成立後の統合に向けた作業(中小PMIガイドライン2022年)
- ・PMI重点取組(成立前)1位:「相手先経営者とのコミュニケーション」56.1%
イノベーション活動と海外展開
簡単にいうと
中小企業の研究開発費は0.9兆円(大企業15.1兆円)で低水準。でも研究開発投資を実施した企業は売上高・付加価値額が高い傾向!海外展開では「製造業」が最多(21.1%)、インバウンド対応は宿泊業・飲食業が進んでいる。
成長に向けたイノベーション活動と海外展開の実態です。
① 研究開発費の推移(非一次産業・企業規模別・図表1-3-32)
2021年度は中小企業・大企業ともに前年度に比べて増加している。大企業:15.1兆円、中小企業:0.9兆円(水準の差は大きい)。
② 売上高比研究開発費の推移(図表1-3-33)
中小企業はほぼ横ばい(0.5%)、大企業は増加基調(2.7%)で推移。
③ 研究開発投資の実施と業績(図表1-3-34・35)
研究開発投資を実施した企業は未実施企業と比べて、売上高・付加価値額の成長度合いが高い(実施:101.8 vs 非実施:98.8 / 付加価値:107.8 vs 102.6)。
④ 「イノベーション活動」関連まとめ(図表1-3-36)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 活動に向けた取組の課題 | 「自社の強みをいかせるニーズの探索」28.9%が最多、次いで「ニーズを把握するためのマーケティング」21.8% |
| 外部機関・人材の活用で得られたもの | 「自社のコア技術やその強み」38.1%が最多、次いで「製品化・差別化に向けたフィードバック」35.7% |
⑤ 海外展開の実施状況(業種別・図表1-3-37)
全体では約1割の企業が「海外展開を実施している」。業種別では「製造業」が最も高く(21.1%)、次いで「卸売業」(18.1%)。
⑥ 製造業の海外展開の実施状況(図表1-3-38)
「間接輸出」22.8%が最多、次いで「直接輸出」14.9%(輸出が中心)。
⑦ 「海外展開」関連まとめ(図表1-3-39)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 海外展開の相談先(製造業) | 「JETRO(日本貿易振興機構)」35.6%が最多 |
| 卸売業の輸出での言語の乗り越え方 | 「社員が元々扱える言語だった」43.3%が最多 |
| インバウンド対応(宿泊業) | 「WEBサイトの多言語化」37.6%が最多 |
| インバウンド対応(飲食サービス業) | 「メニューの外国語対応」31.5%が最多 |
試験のポイント
- ・中小企業の研究開発費(2021年度):0.9兆円(大企業15.1兆円)・増加
- ・売上高比研究開発費:中小企業はほぼ横ばい(0.5%)、大企業は増加(2.7%)
- ・イノベーション活動の課題1位:「自社の強みをいかせるニーズの探索」28.9%
- ・海外展開実施率の最も高い業種:「製造業」21.1%
- ・製造業の海外展開:「間接輸出」22.8%が最多(直接輸出14.9%)
- ・海外展開の相談先(製造業)1位:「JETRO」35.6%
- ・インバウンド対応(宿泊業)1位:「WEBサイトの多言語化」37.6%
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