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テキスト/企業経営理論/コンティンジェンシー理論

コンティンジェンシー理論

組織構造論

「唯一最善の組織はない」というコンティンジェンシー理論は、環境条件に応じて最適な組織構造が異なると説く理論です。バーンズ&ストーカーやローレンス&ローシュの研究を学びます。

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コンティンジェンシー理論の全体像

簡単にいうと

「どんな状況でもベストな組織」なんて存在しない。環境や技術によって最適な組織のかたちは変わる——これがコンティンジェンシー理論の核心です。

コンティンジェンシー理論(条件適合理論)とは、あらゆる状況に通用する唯一最善の組織構造は存在せず、外部環境・技術・戦略などの条件要因(コンティンジェンシー要因)に応じて最も効果的な組織のあり方が異なるという考え方です。

古典的管理論が「普遍的に正しい組織原則がある」と主張したのに対し、本理論は「状況次第で最適解は変わる」という立場をとります。

代表的な研究者と着目した条件要因は以下の通りです。

研究者着目した条件要因主な発見
バーンズ&ストーカー外部環境の安定性機械的システム vs 有機的システム
ウッドワード生産技術の種類技術タイプごとに適合する組織構造が異なる
ローレンス&ローシュ環境の不確実性高業績企業は分化と統合を同時に高水準で実現

具体例

安定した需要のもとで定型製品を大量に製造するメーカーでは、ルールや手続きが整備されたピラミッド型組織が効率的です。一方、技術革新が速いIT企業では、部門横断的なプロジェクトチームを柔軟に組める有機的な組織が高い成果を上げます。

試験のポイント

  • コンティンジェンシー理論の根本メッセージは「唯一最善の組織は存在しない」です
  • 古典的管理論(普遍主義)との対比で出題されることがあるので、違いを押さえましょう
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バーンズ&ストーカーの機械的システムと有機的システム

簡単にいうと

バーンズとストーカーは、イギリスの製造企業20社を調べて「安定した環境にはカッチリした組織、変化の激しい環境には柔軟な組織が合う」ことを発見しました。

バーンズ(T. Burns)とストーカー(G.M. Stalker)は、イギリス・スコットランドの電子機器産業を含む約20社の製造業を対象に調査を行い、外部環境の安定度合いに応じて効果的な組織形態が異なることを示しました。彼らは組織構造を「機械的管理システム」と「有機的管理システム」という二つの理念型に整理しました。

機械的管理システム(Mechanistic System)は、職務が細かく専門化され、権限と責任の所在が明確に規定された階層的な組織です。コミュニケーションは主に上下方向(垂直的)に行われ、上位者の指示・命令に基づいて業務が遂行されます。規則や手続きが重視され、組織メンバーは自分の担当する狭い範囲の業務に忠実であることが求められます。

有機的管理システム(Organic System)は、職務の境界が流動的で、状況に応じてメンバーの役割が柔軟に再定義される組織です。コミュニケーションは水平方向(横断的)にも活発に行われ、メンバー同士の相互調整によって業務が進みます。公式の規則よりも、共有された目的意識や専門知識に基づく協働が重視されます。

比較項目機械的システム有機的システム
適する環境安定的・予測可能不安定・変化が速い
職務の範囲狭く専門分化広く柔軟に変化
権限の構造階層的・集権的分権的・フラット
コミュニケーション垂直的(上意下達)水平的(相互調整)
行動の拠りどころ規則・手続き・上司の命令共有目的・専門知識
意思決定トップに集中現場に分散
組織への忠誠上司・部門への忠誠課題・プロジェクトへの関与

具体例

例えば、公共事業向けの鉄鋼メーカーでは需要が安定しており、品質基準や製造手順も確立されています。このような企業では機械的システムが効率的です。反対に、スマートフォンアプリの開発会社では顧客ニーズや技術トレンドが短期間で変わるため、チーム編成を機動的に組み替えられる有機的システムが高い成果を生みます。

試験のポイント

  • 機械的システム=「安定環境に適合、垂直的コミュニケーション、職務の明確な専門分化」、有機的システム=「不安定環境に適合、水平的コミュニケーション、職務の柔軟な再定義」というキーワードの対応を正確に覚えましょう
  • 試験では、特徴の説明文がどちらのシステムに該当するかを問う形式が多く出題されます
3

ウッドワードの生産技術と組織構造の研究

簡単にいうと

ウッドワードは「工場でどんな作り方をしているかで、うまくいく組織のかたちは違う」ということをデータで証明した研究者です。

ウッドワード(J. Woodward)は、イギリス南東部エセックス州の製造企業約100社を対象に大規模な実証調査を行い、生産技術のタイプと組織構造との間に明確な関連性があることを発見しました。彼女は生産システムを技術的複雑性(technical complexity)の低い順に以下の3つに分類しました。

1. 単品・小バッチ生産(個別生産)

顧客の注文に応じて一品ずつ、あるいは少量ずつ製造する方式です。試作品や特注品、船舶建造などが該当します。作業者の技能や判断に依存する部分が大きく、有機的な組織構造が適合します。

2. 大バッチ・大量生産

標準化された製品を大規模に製造する方式です。自動車の組立ラインや家電製品の量産などが典型例です。作業工程が細かく分業・標準化されるため、機械的な組織構造(官僚制的な管理体制)が最も適合します。

3. 装置生産(連続プロセス生産)

化学プラントや石油精製のように、原材料を連続的に投入し加工する方式です。生産工程が自動化されているため、現場作業者の監督よりも設備の維持管理や異常対応が重要となり、再び有機的な組織構造が適合します。

生産技術タイプ具体例管理階層の数管理者1人あたりの管理範囲適合する組織構造
単品・小バッチ生産受注生産品、試作品少ない狭い有機的
大バッチ・大量生産自動車組立、家電量産中程度広い機械的
装置生産(連続プロセス)石油精製、化学プラント多い狭い有機的

ウッドワードの重要な発見として、各技術タイプにおいて業績の高い企業は、そのタイプの平均的な組織構造の特徴に近い構造をもっていたという点があります。つまり、技術タイプごとに「最適な組織構造」が存在し、そこから外れた構造をとる企業は業績が低くなる傾向が見られました。

具体例

たとえば造船会社(個別生産)では、1隻ごとに仕様が異なるため、熟練技術者が現場で判断しながら柔軟に作業を進めます。一方、自動車工場(大量生産)ではベルトコンベアに沿って標準化された工程を管理するために明確な指揮命令系統が必要です。石油精製所(装置生産)では自動化された設備を少数の専門技術者が監視・保守するため、フラットな組織で十分機能します。

試験のポイント

  • ウッドワードの3分類(単品・小バッチ → 大量生産 → 装置生産)の順序と、各タイプに適合する組織構造を整理して覚えましょう
  • 特に「大量生産だけが機械的組織に適合し、単品生産と装置生産は有機的組織に適合する」というU字型の関係が頻出ポイントです
  • 管理の階層数は技術的複雑性が高まるほど増加する点も押さえておきましょう
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ローレンス&ローシュの分化と統合

簡単にいうと

ローレンス&ローシュは「環境が複雑なほど部門を分けて専門化すべきだけど、同時にバラバラにならないよう統合する仕組みも必要」と主張しました。

ローレンス(P.R. Lawrence)とローシュ(J.W. Lorsch)は、プラスチック産業・食品産業・容器産業という不確実性の異なる3つの産業に属する企業を比較調査し、環境の不確実性の度合いに応じて組織内部の「分化」と「統合」のあり方が異なることを実証的に明らかにしました。

分化(Differentiation)とは、各部門がそれぞれ直面する下位環境(市場・技術・規制など)に適応するために、部門ごとに異なる目標志向・時間志向・対人志向・構造の公式化の度合いを発達させることです。単に部門を分けるという意味だけでなく、各部門の思考様式や行動パターンが異質化していく過程を指します。

統合(Integration)とは、分化した各部門の活動を全体として統一的な方向に調整・連携させることです。ローレンス&ローシュは、統合を実現する手段として以下のようなものを挙げています。

  • 階層(マネジメントによる直接調整)
  • 公式のルールや手続き
  • 部門横断的な統合担当者(インテグレーター)の配置
  • 部門間の合同委員会やタスクフォース
  • 直接的な部門間コミュニケーション

彼らの調査から得られた主要な結論は以下の通りです。

環境の不確実性高業績企業の特徴
高い(例:プラスチック産業)分化の度合いが高く、かつ統合の度合いも高い。統合担当者を設置し、部門間のコンフリクト(対立)を積極的に解消する仕組みをもつ
中程度(例:食品産業)分化・統合ともに中程度
低い(例:容器産業)分化の度合いが低く、統合も階層的な手段で十分に達成できる

重要なポイントは、不確実性の高い環境では分化を進めるほど部門間のコンフリクト(目標や優先順位の対立)が増大するため、それを解消するための高度な統合メカニズムが不可欠になるという点です。分化だけを高めてもコンフリクトが放置されれば組織全体の業績は低下します。

具体例

たとえばプラスチック産業では、研究開発部門は長期的な技術革新に注力し、営業部門は短期的な顧客対応に集中し、製造部門は日々のコスト効率を追求します。部門ごとに時間軸も関心事も大きく異なる(高い分化)ため、部門間の利害調整を行うインテグレーターを置くことで全社的な整合性を保っています。一方、容器産業では技術や市場の変化が緩やかなため、部門間の考え方の差が小さく(低い分化)、通常の管理階層による調整で足ります。

試験のポイント

  • 「分化」は部門を分けるだけでなく、各部門の志向・構造が異質化することを意味します
  • 「高い分化」と「高い統合」は矛盾するものではなく、不確実性の高い環境では両方を同時に高水準で実現している企業こそ高業績であるという点が最大のポイントです
  • インテグレーター(統合担当者)やコンフリクト解消のメカニズムについても問われることがあります

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